午後11時52分

 
「別に楽しくなかったわけではなかったんだ。」
男は言い訳を言い訳で覆い隠すような口調でそういった。
「そう?」
女は男のことを全く信用していないような口調で返した。
男は次にどの言葉を選べば最善の選択なのだろうかと探すように
俯いたまま目を左から右へとうろうろさせている。
時計は淡々と長針を10時の方向へと指し、
ひんやりとした空気だけが漂うこの空間に今も時が進んでいることを告げていた。